第4章
起きると私の横に服とメモが置いてあった。
服といっても青いローブのようなもので、小学生が学芸会で作るような布を切って縫い合わせただけのものだった。
といっても、冷子と出会ってからの4日間私は素っ裸のままだったので、これが与えられただけでもとてもうれしかった。
メモには次のように書いてあった。
”8時に出かけるからそれまでに用意してね。 冷子”
私「8時・・・?」
おそるおそる時計を見るとまだ6時半、私はホッと胸をなでおろした。
私「でも何で今日は散歩なんかに行くのかしら・・・」
私は不安でしかたなかった。行った先で何をされるかわからないのからだ。
私「もしかしたら・・・」
考えたくなくてもいろいろなことを考えてしまう。
そうこうしているうちにふと時計を見るともう7時45分になっていた。
私「たいへん!着替えなきゃ!」
そして8時ごろ・・・
ガチャッ
冷子「おはよう。おちびちゃん。」
私「おはようございます。冷子様。」
私は思い切って聞いてみた。
私「あのぅ・・・」
冷子「ん?なぁに?」
私「ひとつ聞きたいことがあるんですが・・・」
冷子「いいわよ。何かしら?」
私「ど、どうして今日は遊ばないんですか・・・?」
冷子「ふふふ・・・それはね、今日があたしの誕生日だからよ。」
私「え?そ、そうなんですか?」
冷子「そうなの。あたしは誕生日には小人をいじめないって決めてるのよ。」
私「なるほど・・・。あ、お誕生日おめでとうございます!!」
冷子「うふふ。ありがとう。じゃあ行こうかしら?」
私「はい!!」
冷子は私をつかむと胸の谷間に私を入れた。冷子の体温が私を包み込んだ。
ガチャッ
外に出ると太陽の光で一瞬視界を奪われた。
冷子「ふふふ、どう?久しぶりの外界は。」
私「とてもうれしいですぅ!!」
冷子「よく見ときなさい。今日が終わったらまた1年間外には出られないんだからね・・・」
私「あうう・・・」
冷子「服が適当になっちゃってごめんね。何せ今日があたしの誕生日ってことに昨日気がついたもんだから、急いで作ったのよ。」
私「いえ、とんでもないです!」
冷子「そんなに気を使わなくたっていいわよ。今度いいのを作ってあげるから。」
私「あ、ありがとうございます!」
冷子「今日はすっごく機嫌がいいから、お前が聞きたいことは何でも聞いていいわよ。全部答えてあげる。」
私「ほ、ホントですか?」
冷子「ええホントよ。」
聞きたいことは山ほどあった。
私はここぞとばかりに質問をぶつけた。
<なぜ私を選んだのか?>
私「どうしておもちゃにするヒトに私を選んだんですか?」
冷子「それはねぇ、お前の声で選んだの。」
私「え?」
冷子「お前はあたしに捕まえられた日のことを覚えてるかしら?」
私「あの日私は公園で男3人くらいに囲まれていました・・・」
冷子「そう。そこの近くをちょうどあたしが通りかかったのよ。そしたらお前が叫び声をあげたでしょ?」
私「はい・・・」
冷子「その叫び声を聞いて、この子ならいいおもちゃになるって思ったのよ。」
私「あの・・・あのとき私を取り囲んでた男たちはどうしたんですか?見つからなかったんですか?」
冷子「あのときあたしはここにいた4人全員に縮小魔法をかけたの。もちろん私の正体がバレないようにするためにね。」
私「・・・・」
冷子「そしたらあたしの魔法が強すぎたのせいかお前は気絶しちゃったのよ。後の3人は私に気づいて逃げようとしてたけど捕まえて食べちゃったわ。」
私「!!」
冷子「ふふふ・・・3人まとめて口の中でぐっちゃぐちゃに噛み潰してやったのよ。痛かったんでしょうね、悲鳴が口の外まで聞こえてたわ。」
私「そ、そうですか・・・」
<どうしてこんなことをするのか?>
私「どうしてこんなことをするんですか?」
冷子「どうしてって・・・楽しいからに決まってるじゃない。」
私「・・・」
冷子「もうわかってると思うけど、あたしってドSでしょう?だから悲鳴なんか聞くといたぶりたくなるのよ。」
私「で、でしたらSMクラブの店員になればよかったんじゃ・・・」
冷子「じつはそれになったこともあるの、だけどあたしの趣味に合わなかったのよ。」
私「どんなのが趣味なんですか?」
冷子「一言で言ってしまえば『完全支配』ね。人間の自由を完全に奪って絶対的な力でいたぶりたかったのよ。」
私「・・・」
冷子「そこで思いついたのは『人間を小さくする』ってことなの。小さくして手のひらサイズにしてやったら動けないでしょう?」
冷子は私を握って動くように言った。軽く握っているはずなのに私の自由は完全に奪われていた。
私「動けないです・・・」
冷子「でしょ?私が求めてたのはこれだったのよ。これだったら縮んだ人間は私に逆らえないし、殺したって世間にばれることなんてないでしょう。」
私「こ、殺すって・・・」
冷子「ふふふ・・・そう、私に逆らうやつは殺してやるの。前にも言ったけど食べちゃうのよ。」
私「あうう・・・」
もう恐ろしくてこれ以上聞けなかった。すると冷子は私にお昼にしないかと聞いてきた。
外の風景を眺めながらサンドイッチを食べる。今まで当たり前だったことがもうできないんだと思うと涙が出てきた。
冷子「あらあら、どうしたの?泣いたりなんかしちゃって・・・。」
私「・・・・」
冷子「大丈夫よ。お前の世話はしてあげるから。」
私「・・・・」
冷子「さぁ、次は生地屋さんにでも行こうかしら。お前の服の生地を選ばしてあげる。」
私「あ、ありがとうございます!!」
しばらく歩くと結構大きい生地屋についた。
冷子「どんな柄がいい?」
冷子はいろんな生地を手にとっては見せてくれた。
私はその中の青色の水玉模様の生地を選んだ。
私「これがいいです。」
冷子「これね?いいわよ。」
生地を買って出たらもう日は西に傾いていた。
冷子「ほかに行きたいところはないかしら?ないんだったら帰るけど。」
帰りたくなかった。しかしまったく知らない土地なので場所が思い浮かばなかった。
私「ありません・・・」
冷子「そう、じゃ帰るわね。」
しばらくして、地獄(冷子の家)についた。
冷子「明日からまた遊んでやるからね・・・。覚悟しときなさい。」
私「あうう・・・」
こうして天国のような1日が終わった。
―第4章 終了―